上のページへ
2.資本調達に必要なプレゼンテーション資料の作成方法

●目的にあったビジネスプラン
 人には7個までの管理能力しかないといわれています。ピラミッド型組織は人に関するこの典型的な結果だと言われています。
 財務関係の書類も同様で、損益計算書の販売費および一般管理費には、人件費だけでも給与、賞与、退職金、法定複利費、福利厚生費、賞与引当金、退職給与引当金等、さまざまな勘定があります。これらを個々に把握できる人は、既にプロの領域に入っているといえましょう。ビジネスプランを社内管理用に作成する場合は、こうした科目を統合し、分かりやすい指標、7個程度に納めると良いかと思います。
 ベンチャーキャピタルに出す資料としては中期スパンのものを出すことです。ベンチャーキャピタルが投資してそれが回収されるまでの期間は、早くても3年程度かかります。よってそれに応じた中期的な計画を作成する必要があります。また代表的な株価の指標としてPERがあります。PERは、株価が一株当たり当期利益の何倍になっているかということを示す指標です。またこの数値は20〜30倍が一般的であり、話題性のある会社や業種であれば50倍〜80倍になることもあります。こうした指標を念頭におきながら、ベンチャーキャピタルにもうまみのある事業計画書を作成する必要があるでしょう。


●サマリーを作成、厚い資料は無用、専門用語の多用は避ける
 ベンチャーキャピタルの担当者は、最初、せいぜい15分程度しか事業計画書を見ません。よって、分厚い資料が良いという発想のもとで事業計画書を作成しても無駄なのです。厚いものを説明しても聞いていないし、そういうものは印象に残らない。サマリー、要約を2〜3枚付けることが重要です。厚くすることを目的にした事業計画書は、いろんなことが盛りだくさんで、どれ一つピンとこないものになっていることが多くあります。これは逆に自信のなさの現れだと思われることもあります。
 また専門用語の多用も避けるべきです。ベンチャーキャピタルの最初の担当者は、ゼネラリストであることも多く、専門用語についていけないこともあります。ベンチャーキャピタルの人だから業界を熟知していると思ってはいけません。


●強みと弱みの明示、弱みの解消法、優位性アピール等
 通常、事業計画書に弱みを書く人は少ないのですが、ベンチャーキャピタルは調査能力が優れているので、こうした弱点もそのうち露呈されることになります。経営者以上に会社のことがわかることはありませんが、つまらないことを隠していてもばれてしまうので、経営者の人間性を問われてしまう最悪の事態になりかねません。ベンチャーキャピタルは、会社ではなく経営者に出資する気でいるのです。また弱みを出していると、これが全てであるという担保になり、調査する気持ちを減退させる効果もあります。
 なお一般的なリスクは、新興市場に公開したベンチャー企業のリスク情報が参考になります。


●要約形を開示する
 ベンチャーキャピタルの担当者は優秀なので、資料は合理的に作成する必要があります。例えば、財務資料として先ず基礎データがある。次に基礎データを要約し、それをさらに要約する。それぞれその数字は基礎データから引っ張ってきますが、ベンチャーキャピタルへの見せ方として最後の要約形をはじめに見せることにします。最初から基礎データを見せることはかえって良くないのです。徐々に基礎資料にさかのぼっていくと、心理的に基礎データの信憑性が高まります。会計士の監査でも、税務署の調査でも同様で、このような見せ方をされると、基礎データが 正しいという気持ちになってしまいがちなのです。


●社長の経歴書等
 事業計画書には、社長の経歴や会社の業歴も入れるべきです。公開するときには、ブロードショーといい、多くの機関投資家を廻ります。そのとき、意外に機関投資家の方々は、経営者の略歴、資本構成、役員報酬など見ています。これによって社長の人格などがわかるのかもしれません。


●分析の手法
 事業計画書は合理的に作成しなければなりません。このような合理的な事業計画書を作成するためのノウハウとして、次のようなものがあります。

・バリューチェーン
 通常、事業の流れは購買、開発、製造、マーケティング、販売、物流、サービスといった経過をたどります。このように事業の過程を分断し、個々の部分における自社の強みや弱みを分析します。業種によって強くしなければならないところがありますから、当然その過程における自社の強みと、自社の独自性をアピールするため、他の過程における強みも明示する必要があります。

・経営資源
 会社の経営資源は、「人」「物」「金」「情報」と言われています。会社の各局面において、これを分析することも考えられます。

・5W2H
 通常は5W1Hですが、2Hとはhowとhow muchを意味します。迷ったときはこの指標に当てはめて分析すると明確になります。


●相手が知っている言葉を使う
 それから、ベンチャーキャピタルの担当者が知っている言葉を使うことです。
例えば、商品の特性を説明するのに、カタログに基づいて説明することは非常に重要ですが、PPMといった指標を用いることもできます。PPMとは商品やサービスを、そのシェアと成長率で考えることです。成長率もシェアも高いものを花形、シェアが高いが成長率の低いものは問題児、成長率が低いがシェアは高いものを金のなる木、両方小さいものを負け犬といいます。会社はシステムでなければならないので、商品構成もバランスがとれていなければなりません。こうした内容を表を使って説明されると、勉強しているな、普通の経営者と違うな、という印象を与えることができるのではないかと思います。


時間がなくなりましたので、この辺で終わります。テーマが盛りだくさんで全部をお話しできませんでしたが、参考にしていただけると幸いです。